アクセンチュアのセグメント別企業研究 金融サービス本部
前記事でも紹介しましたが、アクセンチュアのコンサルティング部門は、業界別で大きく5つのチームに分かれています。アクセンチュアの中途採用の募集ページを見れば分かりますが、採用自体、この5つの業界別で募集しています。また、アクセンチュアの決算資料も、この5つのセグメント別で業績を公表していますので、恐らくですがチームの戦略や予算についても、チーム毎で異なると考えられます。
本記事は、その5つのチームの1つである「金融サービス本部」について調べた内容の共有です。
金融サービス本部の業績
◎売上、営業利益共に減少傾向
まずは、2019年のアニュアルレポートで公表されたインダストリー別の売上高と営業利益について概観します。
【アクセンチュア 2019年度売上高】
業界 | 19年度売上 | 18年度売上 | 増減率 |
CMT | 8,757 | 8,230 | 106% |
Financial | 8,494 | 8,566 | 99% |
Health&Public | 7,161 | 6,878 | 104% |
Product | 12,005 | 11,338 | 106% |
Resource | 6,772 | 5,942 | 114% |
Other | 26 | 39 | 67% |
Total | 43,215 | 40,993 | 105% |
※金額は、$Million単位です。
金融サービス本部の2019年度の売上金額は8,494ミリオンドルなので、$1=110円で計算すると、年間約9,343億円の売上高だと分かります。アクセンチュアの中ではCMT部門に次いで二番目に大きなセグメントです。
売上成長率については、ドルベースでは減少傾向にあるようですが、アニュアルレポート上では現地通貨ベースで、昨対比3%増に着地したと公表されています。
【アクセンチュア 2019年度営業利益(率)】
業界 | 19年度営業利益(率) | 18年度営業利益(率) | 増減 |
CMT | 1,555 (18%) | 1,380 (17%) | 175 |
Financial | 1,238 (15%) | 1,365 (16%) | -128 |
Health&Public | 739 (10%) | 766 (11%) | -27 |
Product | 1,720 (14%) | 1,664 (15%) | 56 |
Resource | 1,053 (16%) | 724 (12%) | 330 |
Other | – | – | – |
Total | 6,305 (14.6%) | 5,899 (14.4%) | 406 |
※金額は、$Million単位です。
営業利益については、$1,238 Millionなので、日本円ベースで約1362億円です。昨対比で$-128 Millionなので、売上高$-72 Millionを差し引くと、コストのみで$56 Millionの純増だと分かります。
この業績に関して、アクセンチュアのアニュアルレポートでは、欧州市場でのBanking & Capital Markets部門での伸びが鈍化したことによると発表されています。
日本単体では不明ですが、日本が所属するGrowth全体では、堅調に推移していると記載があります。
金融サービス部門のビジネス領域
Financial Services/金融サービス本部は、銀行や保険業界を中心として、戦略立案・実行支援のコンサルティングを実施している部隊です。
金融サービス本部は更に、 Banking(銀行)、Capital Markets(キャピタルマーケット)、Insurance(保険)の3つの部隊に分かれています。そして2019年のアクセンチュアの年次有価証券報告書上では、Banking&Capital Markets(この2部門が合算表記されている)がFinancial Service部門全体の70%の割合で収益を上げていて、残りの30%がInsurance部隊の売上となっています。
各部隊が対象としいるビジネス領域は下記の通りです。
・Banking:銀行
・Capital Marketsはは、投資銀行、取引所、決済機関、資産運用企業、預託機関、証券会社
・Insurance:保険
銀行と保険業界については専門の部隊が存在し、その他の金融サービスを、Capital Marketsの領域としてすみ分けている印象です。
金融サービス本部の特徴
◎Fintech市場が急速に伸びる
2016 年の日本におけるフィンテック投資は前年比135% 増の1.5 億ドル(14 件)となり、国内フィンテック市場は順調に成長しているとのことです。グローバルと比較すると、フィンテック先行国や急進国(母国規模活用型・ハブ型)は、いずれもフィンテック投資額が自国GDP 対比で0.04%程度の水準まで到達している一方で、日本はその他の国と同様に0.004% と1桁の差が存在します。見方を変えれば、国の潜在力を引き出すことで、現在より10 倍程度の規模にまで成長するポテンシャルを持っていると言えます。
昨今、ネットバンキングといったIT企業による金融業界の参入、電子マネーによる新しい決済の方法の登場、ブロックチェーンを基幹技術としたビットコインといった新通貨の登場等、金融業界における変化は、日常生活の中で実感する機会が増えているように感じます。ブロックチェーンは、他産業でもまだ成功モデルのない新しい領域ですし、今後金融業界初の新たなテクノロジーの活用方法を模索して提案していける点で、やりがいあるプロジェクトにアサインされる可能性も高いのではないでしょうか。
このようにアクセンチュアという1企業の中でも、沢山の取組を行っていることが分かります。自分がアクセンチュアの中でどのような「業界」に対して、どのような「サービス」を提供していのかをはっきりしておくことは大切です。
そのためにも転職活動や就職活動中の学生は、アクセンチュア全体でのビジョンや戦略といった企業研究を行うと共に、もう一歩二歩ブレイクダウンした部門毎やソリューション毎での研究を行ってみると、入社後のイメージがより深まると思います。
◎関連書籍
最新コンサルティング業界大研究【第7版】 (業界大研究シリーズ)
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